日立とKEK リチウム電池や永久磁石用材料の開発に向けた放射光ビームラインを新設

 株式会社日立製作所は、同社と大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構(以下、KEK)は、KEKの放射光科学研究施設(フォトンファクトリー)に、元素周期表のリチウム(Li)からカルシウム(Ca)までの幅広い元素について固体中の化学結合状態を解析できる軟X線ビームラインを共同で設置する契約を締結したと発表した。

 このビームラインは、鉄(Fe)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)などの磁性をもつ金属についても解析を行うことができるため、次世代の高性能リチウム電池や永久磁石の研究開発に幅広く適用することができ、2014年度中に運用が開始される予定。

 ビームラインが稼働した後、この施設はKEKにより機能性酸化物や次世代デバイス材料などの基礎研究を推進する目的で、一般の大学・公的研究機関などにも公開される。

 最先端の材料開発では、物質の特性を決める要因となる原子の化学結合状態を解析し、これをコンピュータによる理論シミュレーションと比較しながら、材料の高機能化、高性能化に向けた研究が進められる。

 現在、この原子の化学結合状態を解析する手法としては、X線吸収分光法やX線を用いた光電子分光法が広く利用されているが、いずれの手法でも、対象とする元素に応じて特定のエネルギーを持つX線を利用する必要があるため、これまで放射光実験の際には、実験設備に研究目的に応じたビームラインを設置し研究を行ってきた。

これに対して、今回日立とKEKが新設するビームラインでは、1本のビームラインで幅広いエネルギー範囲(30~4,000 eV)にわたる軟X線を利用し、元素周期表におけるLiからCaまでの元素の化学結合状態の解析が可能となっている。

 この施設の活用により、以下の分野での原子レベルの解析に基づいた材料の高性能化や新材料の開発が期待される。

  • リチウム電池の高性能・長寿命化に影響する電極材料中でのリチウムの化学結合状態の解析
  • 炭素を含む有機化合物の計測に基づく生体細胞の解析
  • Fe、Co、Niなど、各種モータで利用される永久磁石の性能の決め手となる材料の解析

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