東北大学、高品質リチウムイオン電池開発の新指針となる研究成果を発表

 東北大学は、同大学原子分子材料科学高等研究機構(AIMR)の研究グループが、リチウムイオン電池の正極材料のひとつであるマンガン酸リチウム薄膜の合成時に、薄膜中のリチウムが欠損するメカニズムを数学的手法を用いてに解明したと発表しました。

 リチウムイオン電池の正極材料に使用されるマンガン酸リチウムの化学式はLiMn2O4であり、この式が示す通り薄膜中のリチウム:マンガン:酸素の比率が 1:2:4 になるのが理想です。
 
 しかし、実際の薄膜合成時にはリチウムの欠損が起こり、高品質の薄膜合成が困難となっていたため、欠損発生のメカニズムの解明が求められていました。

 そこで同研究グループは、マンガン酸リチウムの薄膜合成時に導入する酸素ガスの圧力と合成された薄膜中に含まれるリチウム原子とマンガン原子数の関係を丹念に調べ、また、合成にかかわる各原子の質量および速度を考慮したモデルにより薄膜合成時の原子の振る舞いをシミュレーションして薄膜内に取り込まれる原子数比を計算することで、リチウム原子欠損のメカニズムの解明を試みました。

 その結果は下図のようになり、以下のような事柄が確認されています。

  • 薄膜中のリチウム原子が欠損すること
  • 酸素の圧力が高くなるほどリチウム欠損量が多くなること

 また、シミュレーション解析からは、薄膜中のリチウム欠損の原因は、質量の軽いリチウム原子が酸素分子との衝突により強く散乱され、広範囲に拡散することにある点も確認されています。

 今回解明された酸素分子との衝突によるリチウム原子欠損のメカニズムは、リチウムと遷移金属を含む材料による高品質薄膜合成の指針となり、今後の高品質薄膜によるリチウムイオン電池の性能向上や機能性酸化物を用いた高性能デバイスの開発に大きく道を拓くものとして期待されます。

マンガン酸リチウム薄膜中のリチウム原子とマンガン原子の比

マンガン酸リチウム薄膜中のリチウム原子とマンガン原子の比
画像提供:東北大学

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